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イントロダクション

疑問が満載なので、
アート
について考えてみた

疑問が満載なので、
アート
について考えてみた

「あいちトリエンナーレ2019」での『表現の不自由展・その後』の展示中止事件から程なくして、全世界的なパンデミックが始まった。日本全国で不要不急が叫ばれ、美術館をはじめとするアートの現場の閉鎖が相次ぐと、アートの存在意義についてさまざまな意見が飛び交い、時にはアート不要論も叫ばれるようになる。そこから日本人にとってアートとは何なのかについて考察する2部作にわたる、この映画の旅が始まった。

出演は「大地の芸術祭」総合ディレクターの北川フラム、ジャーナリストの津田大介人工知能美学芸術研究会らのアート関係者30名以上の他、”影からの声”として美術評論家の椹木野衣が参加。印象的なナレーションは作家・パンク歌手の町田康が務めている。

アート:

1 芸術。美術。「ポップ—」

2 「アート紙」の略。

(デジタル大辞典より)

Session1

惰性の王国

アートはどこで道を踏み外したのか

アートはどこで
道を踏み外したのか

「越後妻有大地の芸術祭」はなぜ世界有数の芸術祭となったのか?「あいちトリエンナーレ2019」で見えてくる日本におけるアートの現状は?また、パンデミックの中、ドイツでは「アートは生命の維持に必要不可欠」と言われているとの報道に、色めき立つ日本のアート関係者も多かったが、それは果たして日本でも同じだと言えるのか?

これらの出来事と並行して、20世紀アートの頂点と言われるマルセル・デュシャンの「泉」(小便器にサインしただけのレディメイド)とは何だったのかを見つめ直しつつ、デュシャンとの親交も深く、ニューヨークのグッゲンハイム美術館で日本人初の個展を開くにまで至った荒川修作がなぜアートを完全に捨てるに至ったのかを検証し、アートの限界を見極めていく。

Session2

46億年の孤独

壊れているのはアート? それとも人間?

壊れているのはアート?
それとも人間?

アートに限界があるならそれはどこから産まれ、それをどのように超えることができるのかを探る旅。

アートセラピーにおける絵画の役割にはじまり、過激な身体改造によって回復される人間性やハチと話をしながら共同で奇妙な造形物を創りつづける蜂研究家、さらには自意識を持った人工知能が作るアートの可能性など、アートからはこぼれ落ちてしまった「いる」「いらない」を超えたものたちが作り出す未知の世界。これは失われてしまった別のアート史か?あるいはアートを破壊してしまうものなのか?

ラスコーの洞窟壁画以来、アートが本来持っていた”わかりえない他者とのコミュニケーションツール”という本質と見つめ合うことは、500万年の人間の歴史の再起動を意味することになるのかもしれない。

映画の中からピックアップ

出演者の発言集

倉本美津留

放送作家

笑いとアートの差なんて
そんなにないやんけ

北川フラム

アートディレクター

小学校に入っている子供たちの
3分の1ぐらいが美術が嫌い

津田大介

ジャーナリスト

あいちトリエンナーレの参加作家の男女比が
「6:4でものすごく多いですね、女性が」
って聞いたとき、僕は「ん?」って
引っかかったんです。

あいちトリエンナーレの参加作家の男女比が「6:4でものすごく多いですね、女性が」って聞いたとき、僕は「ん?」って引っかかったんです。

本間桃世

アラカワ+ギンズ東京事務所

思想哲学がある建物ってお金は生まないんだな

人工知能美学 芸術研究会

草刈ミカ

AIがもっと汎用的に賢くなっても
芸術家は最後まで残ると言われているけど、
わたしたちはそれすら疑ってて

AIがもっと汎用的に賢くなっても芸術家は最後まで残ると言われているけど、わたしたちはそれすら疑ってて

中ザワヒデキ

芸術はもともと不要なんだから
一層不要になるだけなんじゃないの

この映画をよく知るための

キーワード

マルセル・デュシャン
(1887-1968)

フランス出身の美術家(1955年、アメリカ国籍を取得) 既製品を芸術作品としてそのまま用いるというレディメイドの発案者として知られ、油彩画の制作は1910年代前半に放棄。チェスの名手としても知られた。

『泉』

小便器を倒し、”R.Mutt”という署名をした、マルセル・デュシャンによる作品。1917年の『ニューヨーク・アンデパンダン』展にて無審査で展示されるはずが拒否され現在も行方不明。20世紀のもっとも影響を与えたアートの1位にランキングされることも多い。

荒川修作+マドリン・ギンズ

アーティストから後にコーデノロジストを名乗り、科学・芸術・哲学の統合を目指した。日本人で初めてニューヨークのグッゲンハイム美術館で個展を開くが、コーデノロジストになってからは絵画を一枚も描くことはなく、アトリエにさえ出入りしていない。代表作『意味のメカニズム』『遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体』『養老天命反転地』『三鷹天命反転住宅』

『遠近を抱えて』
(1982-1985)

大浦信行氏による全14点の版画連作。大浦氏の自画像として制作されたが昭和天皇の肖像を使用していたことから富山県立近代美術館で問題となり、同館では非公開が決定。作品が掲載された図録も焼却された。その後も議論を起こし続けている。さらに大浦氏は自身の映画作品のコラージュ映像を作成し、『表現の不自由展・その後』で『遠近を抱えてpartⅡ』として展示。『遠近を抱えて』を焼却するシーンが昭和天皇の肖像を焼いたという表現を用いて広がり、あいちトリエンナーレ2019での『表現の不自由展・その後」閉鎖の一因となった。

「ハチ博物館」

長野県中川村にある、蜂研究家の富永朝和氏による博物館。展示内容は通常想像される博物館とは大きく異なり、富永氏と蜂の共同作業による蜂の巣の作品が展示されている。特に世界最大の蜂の巣は、通常1匹でしか巣を作らない女王蜂に共同作業をさせることで作り上げた世界でも珍しいもの。富永氏によるとこれら全ては”蜂と話ができるからなしえること”らしい。

自意識を持った人工知能

現在の人工知能には自意識がないと言われているが、将来的に自意識を持った場合の対応やその際の人工知能の権利について取り沙汰されつつある。ただし、今の技術では実現は不可能であり、シンギュラリティと人工知能が自意識を持つかどうかは別の問題である。

アーティストは生命維持に
不可欠

アーティストは生命維持に不可欠

2020年3月のコロナパンデミックが広がった直後、ドイツのモニカ・グリュッタース文化相は「アーティストは生命維持に必要不可欠な存在」と断言し、大幅なサポートを約束した。「アーティストのクリエイティビティは危機を克服するのに役立ち、未来のために良いものを創造するあらゆる機会をつかむべきである」との発言もあり、日本でもその言葉に勇気づけられた人は多かった。

カチーナ

ネイティブ・アメリカンの部族の一つであるホピ族(「平和の民」という意味)が信仰している精霊的な存在。困難な生活環境にあったホピ族を救うために現れたという伝承があり、今でも毎年の儀式の際にカチーナに扮したり、姿を形取った人形が贈られたりする。カチーナにはざまざまな姿があるが、ユニークなその造形には全て意味があり、自由奔放に作られたものではない。

縄文文化

およそ1万5千年まえから1万2千年前までの日本列島で1万年以上続いたとされる文化の総称。特に知られているのが土偶や土器の世界的にもユニークな造形であるが、なぜそのような形をしているのかについては解明されていない。派手な装飾のある土器も現在でいう美術品ではなく煮炊きの跡があり、生活用品として使われていたことから、生活と信仰が密着していた文化状況が予想されると言う説もある。

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映画「アートなんかいらない!」

2021年度作品 カラー DCP

上映時間

Session1: 98分 Session2: 88分

映倫G

制作:リタピクチャル

配給協力・宣伝:プレイタイム

文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業

©︎2021 リタピクチャル

 

お問合せ: movie@art-iranai.com